政策・提言
第三回どこでもMYカルテ研究会 案内

 テーマ 「災害時における医療・介護情報ネットワーク」--東日本大震災復興へ向けて将来医療情報システムを先取りする 「どこでもMYカルテ」の実現」

日時 2011年7月7日(木)18:00-21:00
場所 東京都中央区銀座六丁目11番1号ソトコトロハス館4F TEL 03-6255-6841
参加費 1000円(資料代)
懇親会(同館2Fにて、21:00から) 5千円

参加希望者は、氏名・所属を明記して以下までお申し込みください。
どこでもMYカルテ研究会(申し込み先) dokodemomyrecord@gmail.com
後援 医療構想・千葉 http://iryokoso-chiba.org/
NPO法人医療福祉ネットワーク千葉 http://www.medicalwel.com/

第三回どこでもMYカルテ研究会プログラム

18:00-18:10
1 モデュレータから: 増山茂(東京医科大学)
18:10-19:10 ○現場では何が起こっていたか:座長 竜崇正(医療構想千葉) 2.東日本大震災全被害の二割を占めた石巻市

石橋悟(石巻日赤病院救命救急センター長)

3.壊滅した気仙沼、介護施設の目から

湖山泰成(湖山医療福祉グループ代表)

4.南三陸の状況:医療・介護情報のあり方

西澤匡史(南三陸町医療統括本部本部責任者)

19:10-20:20 ○将来を見据えた医療情報システムとは:座長 溝尾朗(東京厚生年金病院)
5.「宮城県震災復興計画(第1次案)と医療情報のあり方」

名取雅彦(野村総研公共経営戦略コンサルティング部)

6.「医療情報化に関する総務省の取り組み」

馬宮和人(総務省情報流通行政局情報流通振興課課長補佐)

7.「震災対応の観点から見た新医療IT戦略」

野口聡(内閣官房IT担当室参事官)

20:20-20:50  ○ 座長:田口空一郎(構想日本)
8.震災は情報空間をどう歪めたか 

山根一眞(ノンフィクション作家)

20:50- 総合討論:座長 竜崇正(医療構想千葉)

解題:
 「第3回どこでもMYカルテ研究会」を開催します。2010年07月29日の第1回、同年09月30日に行われた第2回どこでもMYカルテ研究会に引き続くものです。
「シームレスな医療連携の実現」と「どこでもMY病院構想」という2つの軸を実現する医療介護情報IT化国策の推進に、多くの医療関係者・IT技術者・政策担当者・自治体関係者・情報教育関係者・ジャーナリスト・患者団体などにご参加いただき活発な論議をかわした、この2回の研究会は幾許かの貢献をしたはずです。

 第2回と第3回の間に長い時間が生まれてしまったのは、そうあの3・11のせいです。2011年3月11日14時46分に宮城県沖にて発生した、869年観地震以来と目されるM9の大地震が惹き起こした巨大津波は、東日本の太平洋沿岸を300kmにわたり洗い流しました。被害は甚大であり、今もまだその復旧の途上にあります。
被災現地支援に全く無関係であったこの研究会関係者を捜すのは難しい。どこでもMYカルテ研究会のテーマは、大きな意味では医療のIT化を考えることであり、具体的には電子カルテの現状と問題点を地域中核病院・クリニック・薬局・介護施設・在宅者の立場から問いかけることであり、これらを解決可能な技術開発の道筋を探ることでした。
しかし、この面から言うと、あの3・11とそれに引き続く医療をめぐる大混乱は、残念ながら、我々の努力の具現化があの地域において間に合わなかったことを示します。翻訳すれば、「どこでもMY病院があれば」、「なぜシームレスな医療連携をしていなかったのか」、となる問題点を現地の心ある医療関係者から以下のように聞かされたものです。

・個々の医療機関に閉ざされていた紙やスタンドアロンの電子的な個人の健康・医療・薬剤情報は、流されたり燃えたり完全に破壊され消失した。医療情報の閉鎖性・孤立性が問題となった。
・たとえ、医療情報が断片的に残っていたとしても、被災者本人が自分の健康・医療・薬剤情報を正しく知る方法がなければ、意味のある情報ではない。特に、高齢者や小児のみの場合に顕著で、情報の非可搬性が問題となった。
・災害を生き残った被災地の医療機関であっても、非被災地の医療機関の情報へアクセスが出来ず、被災者の方々の健康・医療・薬剤情報を正しく利活用することが出来なかった。情報連携が無く分断されている事が問題となった。
・初期の復旧時においては、全国からボランティア支援の為に集まって来る医療関係者間において、被災者の方々の健康・医療・薬剤情報の授受が困難となった。情報の電子化フォーマットもまちまちであり、ボランティア医師の次に来る医師が分からない等、情報を誰に引き継いで良いのかも定まらない。情報の非共有性が問題となった。
・復旧が進み仮設住宅などへ被災者の方々が移る場合、避難所等にて蓄積した情報があっても、被災者ご自身の健康・医療・薬剤情報の継続が困難となってしまう。移転先にてゼロから情報を蓄積し直す結果となり、情報の非継続性が問題となった。
・健康・医療・薬剤情報の課題としては、情報の電子化及び電子化フォーマット基本部分の統一性や、情報が関係者間にて共有出来ない孤立性、分断性が上げられる。更には、誰の健康・医療・薬剤情報なのか、情報の授受や追加等を行った医療関係者の本人認証を含む情報の信憑性や可搬性にも課題が存在する。

福祉介護領域でも次のような問題点が露呈した。
震災により崩壊した介護施設とその利用者の緊急対応は多くの個人団体自治体の献身的対応により行われたが、取り残された例も少なくはない。医療との連携が断ち切られ、生命の問題につながった例も見られる。
避難所でのこれらサービスを利用者にみられる生活不活発病対策として、ボランティア等による避難生活のストレスの軽減、PTSDの予防、高齢者の身体・認知機能低下の予防の取組がなされている。中越地震の経験の基に制定された介護サポート拠点を仮設住宅に設ける試み一部でなされているが、行政・医療・介護の連携が更に求められる。
ライフラインが寸断され取り残された在宅高齢者の医療・介護対応は、中核病院・在宅支援診療所・訪問看護介護施設が、ICTに支えられた有機的な訪問診療チームを編成することにより可能にすべきである。

第3回研究会では、災害時における医療ネットワークを取り上げました。
震災現場の先生方(地域中核病院から介護施設まで)から生々しい現状をご報告いただくと共に、これらをシームレスに連携しつつ震災復興に結びつけてゆく道筋をシステム構築の領域から考え、実際の地域復興計画に活かしてゆくことができたら、と考えます。国のレベルでいうと、総務省担当官の生の考えもお聞きできる貴重な時間となるでしょうし、内閣官房IT担当室参事官野口聡氏の「震災対応の観点から見た新医療IT戦略」は、この研究会をサマライズするものと期待されます。

モデュレータ 増山茂(東京医科大学)

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平成23年6月27日